博物館実習(古文書選択)の授業では、地域をまるごと博物館に見立て、学生の目で歴史・文化遺産を再発見・再評価し、報告会で地元住民を初めとする市民とその成果を共有する活動に取り組んでいます。
2015年度は初めて、国見町貝田地区で「貝田宿まるごと博物館&まるっと見学ツアー」を実施し、幸いにも大勢の方に足をお運びいただくことができました。
今年度は同じ国見町内の小坂宿にスポットをあてて、夏ごろから学生たちとともに、フィールドワークや資料調査を進めてきました。

1月29日、約10か月にわたる座学とフィールドワークの成果が試される本番を迎えることになりました。
場所は旧小坂小学校、現在は小坂ふれあい館となっている施設です。

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前日の会場設営などの準備の様子です。
各グループで作成したレジュメを綴じ、ボードを組み立てて、できあがったポスターも掲示します。

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午後からは、現地見学会の予行練習として地区内をまわり、本番さながらに注意点を確認しながら、説明内容について確認と修正をはかりました。

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絶好の青空で、雪景色も眩しく映えます。

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明日も同じような好天を期待しつつ…。


さて、本番当日です。
天気もまずまずといったところ。
お客様をお迎えする準備ができる間もなく、受付前から徐々に参加者がお越しになられました。
関係者を含めてですが、80名ほどの参加者がありました。ありがたいことです。

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今回は4つのグループに分かれて調査・研究を進めてきました。
①小屋館グループは、小坂地区にある12代当主伊達成宗の墓と、その隠居所と伝えられる小屋館に注目し、地元でもあまり知られていない戦国初期の伊達氏の史跡がもつ歴史的意義について、成宗と尚宗の父子が対立する明応の乱に注目しながら考察しました。教育委員会関係者の案内で旧跡を踏査し、自分たちなりに感じ取ったことも報告に生かしていました。

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②小坂宿と羽州街道グループは、桑折で奥州街道から分岐する羽州街道の最初の宿場町である小坂宿の景観の変遷と特徴を、江戸時代の村絵図や明治の地籍図、昭和の写真から追いました。さらに羽州街道の難所として知られる小坂峠の様相を、ゆかりの人物や通路開拓の歴史から紐解きました。秋と冬の2回、自分たちで踏査した成果も盛り込まれていました。

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③小坂地区の古文書グループは、2012年3月の被災資料調査の過程で初めて所在確認された江戸時代の高札と、戊辰戦争前後に人馬や宿の手配を命じた先触3点を紹介し、その内容を検討しました。高札は、国境の地にあった小坂で統制された人や物資の様子が具体的にわかる貴重な史料です。先触からは、羽州街道で山形方面と結ばれていた小坂宿の重要性が伝わってきます。

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④小坂地区の寺社と信仰グループは、宿を見渡す高台に位置し、住民の信仰の核となってきた松蔵寺の歴史を、言い伝えを軸とした郷土史研究の成果に学びながら整理しました。そして、今では下火になってしまったものの、長い歴史を有していた地蔵堂にまつわる信仰と祭礼の様子を、古写真をお借りして説明しました。地元の方には懐かしい行事と風景だったのではないでしょうか。

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ある意味で期待していた通り、地元の皆様からはさまざまなご教示を賜ることができました。
予期せぬさまざまな質問に臨機応変にどう答えられるか、学生たちにはいい経験になったと思います。
最後に全員で前に立ち、参加者から講評をいただきました。
一同御礼申し上げます。

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終了後には河北新報さんとふくしまFMさんから取材を受けました。
ふくしまFMさんは、学生たちにインタビューしてくださいました。
これまた初めてのいい経験になったのではないでしょうか。

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午後からはいよいよ博物館の「展示見学」にあたる、古文書展示と巡検ツアーです。
30名ほどの参加者があったため、先に古文書を見る一行と、先に地区内をまわる一行の二手に分かれていただきました。
学生たちも二手に分かれ、午前の報告でご紹介した歴史・文化遺産や歴史的景観を案内していきます。

古文書の展示では、初めて見る地元の古文書に強い関心をお持ちいただいたようで、見学者の間で話がもりあがっていました。
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続いて外に出て、地区内の歴史・文化遺産を辿っていきます。

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最初は会場のすぐ近くにある地蔵堂です。
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宿場町は街道を中軸として両側に屋敷地が広がり、間口が狭く奥行きの広い短冊形地割を特徴としています。
小坂宿でも江戸時代の村絵図や明治時代の地籍図のほか、震災後の調査で所在確認された幕末の家屋敷図でも確認でき、その地割が今日でも利用されています。
そうした景観の名残りを随所に感じつつ、要所で説明を加えながら、旧羽州街道の坂道を登っていきます。

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途中から道を入り、600mほど進んだ先に、松音寺の故地と伝えられ、伊達成宗の墓や小屋館の見えるあたりに到着します。
説明ののち、霊山方面を見渡せる周辺の景観をご覧いただきましたが、いかがだったでしょうか。

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再び旧宿場町に戻り、今回は遠いのでコースに入れることのできなかった小坂峠について説明したのち、最後の松蔵寺に向かいます。

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松蔵寺からは、小坂地区のまちなみを展望することもできます。
江戸時代に寺子屋があったころ、ご住職が子どもたちの帰りをやさしく見守っていた光景が感じられるというMくんの説明は、なかなかよかったのではないでしょうか。

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約1時間半に及んだ見学ツアーも終了です。ご参加いただきまして、ありがとうございました。

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参加者の皆さんがお帰りになられた後、片付けと反省会、講評ののち、記念撮影をして終了です。
達成感を得られたのでしょうか、はたまた安心したのか、みんないい笑顔です。

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今回も教育委員会を初めとする国見町職員の方々のご支援があって、何とか無事終了までこぎつけることができました。
いつものことながら、暖かくきめ細かな心遣いとご指導に、心より感謝申し上げます。
学生たちがいつか社会人となった時に、今回の経験がどこかできっと役立つことを信じて、また来年度も新たな試みを始めていきたいと思っていますので、関係者の皆様にはこれからもよろしくお願いいたします。